先生と呼ばれる職業に就いて、既に20年以上が過ぎました。
この間に、いったいどれくらいの生徒の絵を見てきたでしょう。 生徒の絵は、どれも勢いがあって、それなりに味のあるものです。 アニメ好きで、驚くほど器用に作品を仕上げる子がいました。 幼い頃からデッサン教室に通い、私なんかより、よほどデッサン力のある子もいました。 美術が嫌いで、いつもは何も描かないでじっとしているのに、共同制作をした時だけは、みんなに迷惑はかけられないからと、一生懸命に作業をする子もいました。 沢山の子の沢山の絵を見てきましたが、その中で、忘れられない2枚の生徒作品があります。 1枚は、2年生の女の子が描いた自画像でした。 その子は、特に絵を描くことが好きな生徒ではありませんでした。 部活動もスポーツをやっていたのだと思います。 私は、その学年の所属ではありませんでしたので、週1時間の美術の授業だけのつきあいで、実は、その子がどんな子なのかもよく知らなかったし、その絵を課題に出すまでは、特に印象に残る作品を制作する生徒でもなかったのです。 でも、その自画像が完成に近づくにつれ、私は、その絵から目が離せなくなりました。 美術室の何処にいても、絵の中の彼女が、じっと私を見つめているような、そんな感覚に襲われました。 翌年、彼女の弟が中学校に入学し、彼が2年生になった時、偶然、私が担任になりました。 そして、家庭訪問に行って、驚きました。 彼らのお母さんが、あまりに若かったからです。 お母さんのお話では、覚悟して結婚したけれど、弟はやんちゃで、人なつっこく、お姉ちゃんは、素直で、手がかからないということでした。 中学2年生といえば、反抗期まっただ中の時期です。 彼女は、きっと、すごく頑張っていたのだと思いました。 だから、そんなとき描いた自画像に、自分の思いの丈が込められたのではないかと。 2枚目は、やはり2年生の男の子のデザインでした。 文字の一部を絵にするという、いわゆる漫画の一種です。 彼は、背という文字を、自分が背伸びしている様子で表しました。 ちょうど体育祭の時期だったからか、まるで組体操をしているように、上半身裸で、精一杯背伸びをしている男の子の体が、茶褐色で、しかも筋が浮き出ていて、まるで赤鬼のように見えました。 絵画ならいざ知らず、あのように迫力のある漫画やイラストを、私は見たことがありません。 翌年、これもまた偶然、3年生に進級した彼の担任になりました。 芸術一家に育ち、美術が大好きだった彼は、デザイン科の高校を受験することになりました。 受験の際に、色覚の状況を調査書に書かなければならず、保健室に行き、調べてみて、驚きました。 なんと、彼は色弱だったのです。 しかも、そのことを自覚しているか、聞いてみると、幼い頃から自覚していたけれど、誰にも打ち明けたことがないということでした。 ずっと、一人で悩んでいたのです。 私は、1年生で色の学習に入る前、色覚と共感覚を調査して、事前に、劣等感を持たずにすむようにしているのですが、彼との出逢いが、彼が2年生の時だったので、その機会を逃していたのです。 私は、必死に、彼にゴッホも色弱だった疑いがあること、ピカソは共感覚の持ち主であったことを話しました。 彼のお母さんも美大の出身でしたので、同じ事を息子に話しておられました。 彼は、その春、無事、志望校に進学し、今は、デザイナーとして活躍しています。 私は、人の心に残る絵というのは、このような絵ではないかと思います。 絵の中に、描き手の苦悩が詰まった絵こそが、人を揺さぶる絵なのではないでしょうか。 世の中には、器用に絵を描く人は沢山居ます。 でも、そこに、自分の思いや生き様を込められる人は少ないのではないでしょうか。 だから、サイレントさん、私もあなたも、ここで愚痴って正直カッコ悪いけど、今の心境は、必ず作品に生きてくると思うんです。 (皆さん、超個人的なレビューで、ミヤネヨ~) さて、何でもビョンホンシにつなげてしまって恐縮ですし、私は、演技のことは皆目わからないのですが、ビョンホンシも、演技の中に自らの思いや生き様がにじみ出る俳優さんなのではないかと思います。 だからこそ、私達は目が離せないのではないかと。 皆さんは、どう思われます? ここ最近、絵画やデザインの話ばかりになってしまいましたが、奇しくも、明日は、福岡で1日だけアニメ「マリと居た夏」が上映される日です。 思いや生き様がにじみ出たビョンホンシの声の演技を堪能して来たいと思います。
by lee_milky
| 2006-05-26 22:03
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Comments(16)
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at 2006-05-26 23:58
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kokoro
at 2006-05-27 00:22
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こんばんは。スキン素敵ですね~。
デザインも色もとても好きです。 それと、右側の手の筋がたまりません・・・^^; 印象に残った絵のお話、興味深く読ませていただきました。 以前、TVで中学生の絵の紹介がされているのをみて とても心惹きつけられたことがありました。 きっとあれは鉛筆で描かれていたと思いますが ただの線路を描いているだけなのに、じ~んときました。 あれは、実物を観てみたかったです。 映画行かれるのですね。 感想楽しみにしています。
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lee_milky at 2006-05-27 05:03
☆at 2006-05-26 23:58 さん、おはようございます。
自分を掘り下げる。 まさにその通りですね。 肝に銘じます。 こちらこそ、いつも有り難うございます。 これからもどうぞヨロシクお願いします。
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lee_milky at 2006-05-27 05:15
☆kokoroさん、おはようございます。
せっかくkokoroさんに頂いた画像で作ったスキンだったのに、もう、変えちゃいました。 ここ数日の私の感情の波が、もっと早く来ていたら、あのスキンももっと違うものになっていたのに。。。 >右手の筋 え。。。kokoroさん、の観察眼には、いつも脱帽です。 筋ですかぁ(笑) 人の心にじわぁっとしみとおるような絵が描けたらいいですね。 お茶犬ちゃんも描いてますか? 「マリ物語」、行ってきますね。
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at 2006-05-27 10:26
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みなとみらい
at 2006-05-27 11:07
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milkyさん、おはようございます。
絵のお話興味深くよませていただきました。 したの娘は小学校までアニメのような絵をよく描いていたのですが 中学に進学してからパッタリ書かなくなりました。 理由はよくわからないのですが、いまでも印象に残っている絵が あります。授業で書いたデッサンで、腕を力いっぱい伸ばして何かを つかもうとしているのです。きっと彼女の思いがこめられていた 絵だったのでしょうね。 「マリといた夏」未見です。感想お待ちしています。
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at 2006-05-27 13:11
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マシュマロ
at 2006-05-27 22:36
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この間のレスで・・
やっぱり何か、怖い思いをされて引越しされてたんですね・・全くしりませんでした。 話は変りますが・・ 私の周りも美術関係を仕事にしているものがたくさんいて・・ いとこや叔父が画家や美術教師・・広告代理店で仕事をしています。 物心ついた頃から、近くに住んでいた従兄弟と毎日、絵を描いたり工作したりして遊んでいましたが・・ 進路を決める頃には、それがコンプレックスになってきました。 ・・・自分がちっぽけで自信が無い・・っとか、そんな感じでしょうか・・ 「職業にする」イコール「土俵に上がる」 ・・興味はとてもあるのに、逃げ腰。 ・・・結局は、何故か、服飾パタンナー(兼デザイナー)になりました。 ・・これはこれで「自分に向いている」っと思った時期もありますが・・ 5.6年前まで在宅で仕事を請けてましたが、今は断って違う仕事をしています。 ・・・理由は、フッション業界の事情が絡むので話すと長くなりますが・・。
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at 2006-05-27 23:18
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at 2006-05-28 10:06
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lee_milky at 2006-05-28 20:15
☆at 2006-05-27 10:26 さん、お返事遅くなり、すみません。
BHオッパの歌、堪能されましたか? 私も、今、聴きながら書いています。 画像も一緒に見ると、カラオケ歌ってるオッサ・・・・ピーーーなんだけど、声だけだと、可愛いねー。
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lee_milky at 2006-05-28 20:21
☆みなとみらいさん、お返事遅くなり、すみません。
>授業で書いたデッサンで、腕を力いっぱい伸ばして何かを つかもうとしているのです。きっと彼女の思いがこめられていた 絵だったのでしょうね。 その絵が目に浮かぶようですね。 うちの娘も、中学に入ってから、全く描かなくなりました。 娘曰く。小学校の時は、環境のせいで、好きだと勘違いしてたのだそうです。 それから、お知らせも有り難うございました。
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lee_milky at 2006-05-28 20:26
☆マシュマロさん、こんばんは。
パタンナーさんだったのですね。 私はグラフィックを専攻していましたが、それでも、女子学生への求人は服飾関係のデザイナーの方が多かったように記憶しています。 未だ、男女雇用機会均等法が施行されていない時代ですから。 下着・靴下・子供服など、学生の頃はわからなかった服飾のデザインの奥深さは、子供を産んで初めてわかったような気がします。 でも、どの業界にも、苦労や不都合はつきものなのでしょうね。
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lee_milky at 2006-05-28 20:31
☆at 2006-05-27 23:18 さん、こんばんは。
>特に内向的だったり、いい子ほど、自分ひとりで何でも抱えこんで、 我慢したり、諦めたりすることが多いので、 なんとなく絵や文章に本音が出ることはあるでしょうね。 そこに周りが気がついてあげるってことは大事ですよね。 そうですね。 でも、気づいてやれることより、気づいてやれないことの法が、圧倒的に多いのです。 忙しい時は、今日、何人の生徒と話したかな?って、反省することしきりです。 >「マリといた夏」、彼の声は、始めと終わりに出てくるだけです。 ホントにそうでしたね。 しかも遅刻して、 >冒頭声が聞こえた時、あまりの良さに鳥肌が立ちそうでしたが、 ・・・聞けませんでした。トホホ
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マシュマロ
at 2006-05-29 20:05
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・・話・・中途半端だったんで、また来ちゃいました。すいません。^^;
学校卒業後・・コネみたいなもので、金融機関に就職したんですが・・ やっぱり、ど~しても、ものを作る仕事がしたくなって、働いて貯めたお金でデザイン学校へ行き直しました。 最後の後期だけ・・お金が足りなくなって親が出してくれましたが・・ 創作性のある仕事って、絵を書いたりする事ばかりじゃないですよね。 料理やインテリア・・身近にもある気がします。 子育ても・・創作性がある?・・・これが一番難しい創作物かも。^^; ・・・・難航中。(笑
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lee_milky at 2006-05-29 22:03
☆マシュマロ さん、こんばんは。
>子育ても・・創作性がある?・・・これが一番難しい創作物かも。^^; ・・・・難航中。(笑 子育て真っ最中ですか? これほど、大変でやりがいのあること、無いですよね^^ ものを作るって、本当にいろいろあります。 大昔、バイトで農業サイロの板取の計算をしていたことがありました。 今も、その農業サイロのそばを通ると、「私があの一部を作ったんだな」と思います(爆) それにしても、お仕事を辞めて、学校に行き直すのには、勇気がいったことでしょうね。 その勇気、とても大切なことなのだと思います。
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