南漢山城、舞台挨拶の旅⑤





この回は、5列目だったので、舞台挨拶的には俳優陣と遠く、前列の方の頭と頭の間からしか撮影できず、アップしか撮れなかったのですが、ほぼ中央の座席だったので、映画を観るにはとても良い席でした。
そのせいもあってか、この回あたりから映画の全容をようやくつかむことができました。
少し辛口になってしまうかもしれませんが、このあたりで、映画の感想を記録しておきたいと思います。

1630年代、中国全土を支配していた明が衰えを見せ、それに変わり後金が台頭してきました。
1636年、後金の皇太極(太宗)が皇帝に即位し、国号を清と改めます。
しかし、周辺国の中で朝鮮のみが皇太極の皇帝即位を認めず、あくまで明朝皇帝を推戴する姿勢を見せたことを不快に思った皇太極は、自ら10万の兵力を率いて李氏朝鮮に侵攻しました。
これが、後に言う「丙子胡乱(へいしこらん)」で、仁祖は南漢山城に篭城をしましたが、翌1637年降伏をし、三田渡で皇太極に対し三跪九叩頭の礼による清皇帝を公認する誓いをさせられるという降伏の儀式が行われました。

本作は、仁祖が南漢山城に籠城してから降伏するまでの47日間を、史実に基づき丁寧に描いた大作です。
公開前から評判になった仁祖(在位:1623〜1649)を国王に推戴した一等級功臣の一人であり、丙子胡乱時「主和論」(戦争を避け、和解や平和を求めると主張)を導いた人物であるチェ・ミョンギルと「主戦論」(一戦不滅という主張)の代表者であるキム・サンホンの対峙も圧巻ですが、大胆かつ美しい映像も見ものです。

また、これまで私が感じてきた韓国映画特有のブレが無く、緻密に計算されつくした感じがまるで日本の映画のようでした。
その計算の一つに対比の妙がありました。
最もそれが顕著だったのが、仁祖と太宗のキャラクターです。
腺病質の仁祖に対し、野獣のような太宗。
簡素な南漢山城と清の物でごった返した陣営。
南漢山城の質素な食事と清の贅沢三昧な食糧。

戦う男たちの中にたった一人の幼女。
終盤、自決を覚悟したキム・サンホンが、自身が預かっていたこの幼女を鍛冶屋に預けるシーンで、彼女が彼にしがみつき、別れを嘆いて嗚咽するその声が何とも艶っぽく、この男だらけの映画になくてはならないものになっていました。
これらの対比は、「主和論」と「主戦論」の対比の暗喩だったのかもしれません。

しかし、そういう意味では、チェ・ミョンギル演ずるイ・ビョンホンとキム・サンホン演ずるキム・ユンソクのキャラクターの対比が際立っていませんでした。
ビジュアルも性格ももっと際立って異なる二人が、「主和論」と「主戦論」で対峙していたら、映画はもっとわかりやすくて面白いものになっていたかもしれないと思うのは私だけでしょうか。

チェ・ミョンギルは単身、清陣営に乗り込む豪胆な策士です。
しかし、学者でもあった彼は、ほとんど感情をあらわにしません。
唯一、仁祖が屈辱的な三跪九叩頭の礼をさせられるとき、涙するシーンのみが彼の感情が見えるシーンです。

ああ、ミョンギルとサンホンの対比と言えば、サンホンには背景が描かれているのに、ミョンギルには背景が全く映画かれていないという対比はありました。
でも、ミョンギルが主役なのだから、もっとミョンギルを魅力的に描いても良かったのではないでしょうか。
そもそもこの映画、誰が主役なのかわかりません。
サンホンにも思え、鍛冶屋にも思えます。
ミョンギルは、感情の変化もなく、背景のディテールも描かれていなく、露出も少なくて、どこが主役?と疑問に思わざるを得ませんでした。

台詞の理解できない私が観たからかもしれませんが、本作は、後半、見飽きてしまいます。
ミョンギルとサンホンの論争と戦乱の繰り返しの中だるみ感が否めません。

どっちつかずだった仁祖がミョンギルの主張を受け入れ、清に書状を送るも、それをサンホンが鍛冶屋に命じて阻止したため、ついに太宗は南漢山城に大砲を打ち込みます。
それと入れ違いに、書状が渡っていなかったことを知ったミョンギルが書状を持参している際に、大砲の爆音が轟き、ミョンギルが馬を駈り、清の陣営へと急ぎます。
そのあたりのドキドキハラハラのクライマックスがとても良いだけに、中だるみが残念です。
その繰り返しの中に、ミョンギルの葛藤やミョンギルと仁祖の関係が織り込まれていたら、もっと映画は面白くなったのではないでしょうか。

とは言え、壮大で深遠な映画には違いなく、時代劇好きで大河ドラマを見慣れている日本人に受ける映画かもしれないと思いながら観ていると、ラストのサンホンの自害のシーンで興ざめしてしまいました。
あまりに、日本の時代劇に重ね合わせて観ていたために、サンホンが刀の鞘を投げ捨てるシーンで、違和感を覚えたからです。
韓国の史劇に日本の切腹シーンを求めるのは無理があるのは分っているのですが、私と同じ感覚に陥る人は少なからず居る気がします。

とりとめのない感想になってしまいましたが、以上が、今現在の私の思いです。
もしかしたら、興行不振に影響されているかもしれません。
なにせ、ダークホースの犯罪都市に逆転され、マスコミが騒いだのが、本作の不運でもありました。
あんなことにならなければ、大人にこよなく愛された映画になったのかもしれません。




日韓映画文化交流研究会は随時会員を募集しています。まずは、HPをご覧ください。
「日韓映画文化交流研究会」随時会員募集中!
←Click!! 飛ばない時はこちらから


[PR]
by lee_milky | 2017-11-01 23:52 | 韓国旅行 | Comments(2)
Commented at 2017-11-03 20:31
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by lee_milky at 2017-11-03 21:35
☆非公開さん、コメントありがとうございます。
私も、ビョンホンシのサンホンを観たいと思っていました。
確かに感情移入できませんでしたね。

解説とは言え、セリフがほとんど理解できなかったので、字幕がついたら、誤解が露呈するかもしれません。
その時は、ご愛嬌ということでお願いします^^
<< 南漢山城、舞台挨拶の旅⑥ 南漢山城、舞台挨拶の旅④ >>