何でもかんでも捨ててしまう私が、なぜか捨てられないのが本。
旅先で買った雑誌や文庫本さえも捨てられず、自宅まで持ち帰ってしまう。 だから、家には、結婚してから20年間に読んだ本がほぼ全て天井まである文庫本用の書棚に入っている。 文庫本は、並ぶと極彩色になってしまうカバーは全てはずす。 そして、生成の本体の背表紙が見えるようにして、五十音順に作家別に並べている。 こうしておくと、見た目にも美しいし、再度読みたいと思った時にすぐ探す事が出来るし、どの作家の本をどれくらい読んだかも一目瞭然である。 ところが、ここ数年、この本棚が徐々に浸食されている。 その原因のひとつは、ビョンホンシ。 ビョンホンがらみで、興味を持った本は、そのほとんどが単行本。 それまで全集と文庫しかなかった我が家の本棚にあっという間に増殖し、普通の書棚を満杯にしてしまった。 そして、今では、文庫用の本棚まで浸食し、大きさの違う単行本が、背の低い本棚の中に横になっている。 パッと見の悪いこと、きわまりない。 さらに、よく見ると、私がこだわって並べた文庫本も最近は、順番がバラバラになり、ひどいものは、逆さに入っている。 この2番目の原因を作っているのは、娘と夫。 お小遣いを浮かせるため、私が読んだ本を適当に選んで読んでいるのだ。 家族で本を共有するのは良いことだと思う。 それがきっかけで会話も広がるし、同じ事に興味を持つこともある。 何より、娘が少し難しい本を読んでいるのを見ると、この子もこれが理解できるようになったかと嬉しい。 ようは、二人が読み終えた本を元に戻してくれれば問題はないのだが、同じDNAを受け継いでいる二人には、「整理整頓」という概念そのものが欠如しているらしい。 さて、この「片づけられない」夫が、今読んでいるのが、「中原の虹」。 かなりツボだったらしく、一気に第1巻を完走してしまった。 そして、私に「この本を読むなんて、意外。」と、なぜか嬉しそうに言う。 確かに、私は、歴史小説もハードボイルドも戦争物もほとんど読まない。 ビョンホンシが馬賊の役をしなかったら、おそらくは一生手にする事の無かった本。。。 それを、夫に言いかけて、飲み込んでしまった。 なぜなら、傍らに居た娘に夫がこう言ったから。 「お母さんは、お父さんの会社にアルバイトにきた時、いつも本を持っていて、お昼休みになると静かに読書していた。だから、結婚したんだ。」 娘にもっと本を読めという代わりにこう言ったのだとは思うが、事の顛末を知ったら、彼はどう思うだろう。 ちょっと心が痛んだ夏の朝。 張作霖・張学良・張景恵・ヌルハチ・西太后・光緒帝・愛新覚羅溥儀 ・孫文・袁世凱。。。 この本の面白さは、このようにネットで検索すれば容易に探すことの出来る歴史上の実在人物が数多く出てくることに帰結すると思う。 どこかで聞いた。 世界史で習った。 記憶のかなたをたぐり寄せながら、あるいはネットで検索しながら、読み進む。 ぼやけていた人物の輪郭をなぞり、はっきり浮かび上がらせる作業そのものが楽しい。 2巻、3巻では、ラストエンペラーで観た記憶には新しいけれど、刷毛ではいたような浅い知識を「なるほどそうか。」と多少掘り下げることが出来た。 映画で惚れたのは愛新覚羅溥儀だったが、この本では西太后が異彩を放っていた。 歴史を陰で動かすのは女だと言うが、これほどまでの女性が実在していたとは知らなかった。 歴史に疎い私には、どこまでがノンフィクションでどこからがフィクションなのか判別がつかず、描かれていることを全て鵜呑みにしてしまうから、余計に感動が大きいのかもしれない。 王永江は、実在の人物だということが、検索するまで分からなかった。 後に張作霖の知恵袋となり、中華民国北京政府時期の奉天省長にまで上り詰めた、元易者で役人の彼は、それほど魅力的な人物だった。 特に、短気が元で二度目に蟄居した後、日帝の造った駅舎で易をしていたときのエピソードが面白かった。 彼がそこを商売の場所に選んだ理由のひとつに、大きな声では言えないが、その建物の美しさに惹かれたからとあった。 あるいはそれは、この著者によるフィクションかもしれない。 が、それは当時の中国人における日本人に対する偽らざる感覚だったのではないかと思う。 また、彼にまつわるストーリーの中で、科挙制度についても詳しく知ることが出来た。 私は、今、「先生」と呼ばれる職に就いているが、この「先生」は科挙制度の中で出来た言葉だというのを昔聞いたことがある。 科挙の中では、「先生」は先輩とほぼ同じ意味で用いられていた、いわば相手を敬う言葉。 それが転じて、人が嫌がる職業全てを「先生」と呼び、地位を与えて、人々がその職に就きたくなるようにしたそうだ。 上手いことを考えたものだが、今「先生」と呼ばれているのは、医者、弁護士、美容師、教師など。 確かに、地位が無ければ、3Kの不人気な職ばかり。。。 さて、話を本に戻すと、この本を読めば、馬賊の生態が分かる。 袁世凱が、顔を背けたくなるほどの悪臭を放ち、ボロを下げたような出で立ちの馬賊。 まさか、映画では臭いまでは分からないが、チャンイは、いったいどのような出で立ちで表れるのか。 また、飯を食うことと人を殺すことが同意だという馬賊のチャンイがどれほど残酷に人を殺すのか。 「奴奴奴」は「甘い人生」の比較にならないほどのハードな映画になるだろう。 あの時、気分が悪くなった方には、是非、予習をお勧めする。 いや、その前に日本の配給会社が買い付けるだろうか。 それも心配の種である。
by lee_milky
| 2007-08-18 06:58
| Book Review
|
Comments(4)
Commented
by
みずき
at 2007-08-18 13:02
x
milkyさん、こんにちは。
この本、私の一番苦手な中国の歴史小説、本の話には入っていけないけど、milkyさんが感じられた話を読むだけで面白いです。 ビョンホンさん、暑いところで撮影頑張っておられるようですが、love lbhでセットを見たような気がします。(武道館BD~のも) このスキンころっと変わって、涼しい色合いで、目にも良いし、トップのデザインが素敵ですね。(^^♪(ここに顔文字を入れようと下のをクリックしたらコメントが飛んで行ってしまった) 今日で夏休みも終わりですね。ゆっくりした毎日を過ごされたようで良かったですね。まだまだ暑さが続くますのでお気を付け下さいませ。
0
Commented
by
lee_milky at 2007-08-18 13:40
☆みずきさん、こんにちは。
>ビョンホンさん、暑いところで撮影頑張っておられるようですが、love lbhでセットを見たような気がします。 そうそう、私もどこかで、セットを見つけて、奴奴奴TOPに貼ろうと思っていたのに、すっかり忘れていました。 どこに行ったっけ??? >ここに顔文字を入れようと下のをクリックしたらコメントが飛んで行ってしまった キャ~、ごめんなさい。 そうですね。 新しい窓は開かず、そこに移ってしまいますものね。 良い方法がないか、探してみます。 はい。ありがとうございます。 お互い、夏バテしないように気をつけましょう。
Commented
by
yumi
at 2007-08-19 02:25
x
milkyさん こんばんは^^
毎日、暑いですね~ どこに行っても、この言葉が挨拶代わりになっています。 最近、歴史書どころか、書物からも遠ざかっている私です。 今、中2の娘には、「国語が苦手なのは、本を読まないから!先ずは新聞、そして、文学書!」と言っているのに・・・ でも、私も本棚がある空間が大好きです。 (確かに、最近はビョンホンさんが幅を取っていますが・・・) 時間を作ってゆっくり読書しよう!と、今、誓いました。 先日、チャンイの画像が一時あがったんです。 素敵でした! では、まだまだ、残暑厳しいようです。 お体、ご自愛下さいませ。
Commented
by
lee_milky at 2007-08-19 02:35
☆yumiさん、こんばんは。
私も、ビョンホンシのファンになってからというもの、読書の時間がめっきり減りました。 まとまった時間に読書をしたのは、ここ最近くらいなものです^^; 反省。。。 >先日、チャンイの画像が一時あがったんです。 そうですか~。 見てみたかったです。 苦労して痩せたビョンホンシにはお気の毒ですが、今のビョンホンシ、好きです。 残暑は厳しいのは、体に応えますね。 お互い手抜きで乗り越えましょう(苦笑)
|
日韓映画文化交流研究会
↑↑Click!!↑↑ ※飛ばない時は こちらから 検索
カテゴリ
全体 韓国を詠む 帰郷 韓国語講座 Book Review 日韓交流 童謡と童話 ■LBH出演映画■ +コンクリート・ユートピア +勝負 +非常宣言 +KCIA 南山の部長たち +白頭山 +それだけが、僕の世界 +天命の城 +G.I.ジョー3 +エターナル +マスター +マグニフィセント・セブン +密偵 +ブラック・ファイル 野心の代償 +インサイダーズ +メモリーズ +ターミネーター 新機動 +REDリターンズ +G.I.ジョー2 +王になった男 +Share The Vision +アイリス-THE LAST- +The Influence +悪魔を見た +I come… +G.I.ジョー +HERO +グッド・バット… +夏物語 +甘い人生 +CUT +誰にでも秘密がある +純愛中毒 +マリといた夏 +バンジージャンプする +JSA +我が心のオルガン +地上満歌 +彼らだけの世界 +RUN AWAY +誰が俺を苦しめるか ■LBH出演ドラマ■ ー私たちのブルース -HERE ーイカゲーム -ミスター・サンシャイン -外交官・黒田康作 -アイリス -セリが帰ってきた -オールイン -美しき日々 -遠い路 -ハッピートゥゲザー -ひまわり -白夜3.98 -美しい彼女 -アスファルトの男 -恋の香り -ポリス -生き残った者の悲しみ -明日は愛 -別れの来ない朝 -あの野菊の如く -アスファルト我が故郷 -太陽が昇る日 CF 写真集 Happy Birthday Merry Christmas NHK紅白メッセージ あの日の君へ ファンミーティング 韓国旅行 スキン変更 教科指導 博多グルメ オフ会 Information ?? ??☆単語カード 集中インタビュー はじめに IRISあらすじ和訳 IRIS OST和訳 韓国映画関連映画祭 福智高等学校特別公開講座 日韓映画文化交流研究会 東日本大震災 携帯より 映画 ドラマ 未分類 ブログパーツ
最新の記事
お気に入りブログ
ぽっとの陽だまり研究室 今日も食べようキムチっ子... あばばいな~~~。 RGBとCMYの不思議な関係 まり♪のシネマ・ブックス... My precious ... Thinking of ... 薬膳のチカラ Everybody Ha... 豊前上野.百の箱- mo... ビョンホンびいき Yucky's Tape... LBH映画を語る会@FU... 日本人類言語学会 外部リンク
以前の記事
2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 03月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 07月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 最新のトラックバック
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||