地方の縫製工場に潜伏したララは、そこで知り合った苦学生に、昼休みを利用して勉強を教えはじめる。
しかし、ララの素性がばれてしまうことをおそれた同志から、勉強を教えるのを辞めるように指示される。 一旦は、抵抗を試みたララだったが、結局、従うことに。 ララは、社会の底辺に置かれている人に勉強を教えることも、立派な社会運動だと思っただろう。 しかし、組織に入っている以上、自分の意に沿わないことにも従わなければならない。 私が、職場の労働組合に入るのをかたくなに拒んだのは、なぜだったか、20年以上も経った今では、自分でも説明がつかない。 でも、理由のひとつに、自由を求めるために、労組に入って戦っても、その戦いの過程で、組織に自由を束縛されることを嫌ったことがあったのは間違いない。 新任の頃、ほぼ100%の職員が労組に入っている環境の中で、それを拒むには、強い意志と努力を要した。 私は、労組への加入の勧誘から我が身を守るため、次第に、論点のねじれや矛盾を見つけ、組織そのものや社会運動を小馬鹿にする道を覚えた。 うっかり加入してしまえば、あっという間に、抜き差しならないところにまで行きついてしまいそうで、そんな自分自身が恐くて、私は、執拗なオルグから身を守るのに必死だったのだ。 そう思ったのは、社会運動に関心があったからではなく、何にでも瞬時にのぼせてしまう気性を自覚していたからだ。 だから、このドラマの前半では、ララに共感することができなかった。 若さ故の幼稚さや、ブルジョアジーであるが故の甘さばかりが目についた。 しかし、ララが、ついに行き倒れ、寒さと飢えのために死んでしまった時、自分の中に衝撃が走った。 ララが、学生運動のために命を落とすことは、はじめから分かっていたが、まさか、彼女が、このようにひっそりと死んでいくとは夢想だにしていなかったから。 純粋で、美しかった彼女が、なぜ、こんな死に方をしなければならなかったのだろう。 彼女の死の意味を考えながら、私は、憑き物が落ちたように、これまでの恨みが晴れていくのを感じた。 私の身の回りに居る、運動のために学生生活をふいにした人にも、理解の眼差しをむけられるようになったし、職場で受けたオルグ活動のための嫌がらせのことは、もう水に流し、忘れようと思うことができた。 このドラマは、そんなことを視聴者に伝えたかったのではないだろう。 でも、ララの死が、もしかしたら、私の、これからの人生を変えてくれるかも知れない。 それにしても、このドラマは、本当に良くできたドラマだったと思う。 構築されたシナリオ、ティディと10年後のチャミョンが、共に徐々に年齢を重ねて行く様を無理なく表現したメイク等、どれをとっても、いかにこのドラマが丁寧に作られたかが分かる。 このドラマは、チャミョンやララのような経験を持った人が作ったのではないかと思う。 それほど、このドラマは、大切に大切に作られた感じがした。 作り手の愛情をたっぷり受けて作られたドラマは、一視聴者である私にもやはりたっぷりの愛情を注いでくれた。 チャミョンの生き方や言葉は、これからの私の生きる指針となり、糧となるだろう。
by lee_milky
| 2007-10-11 23:02
| -生き残った者の悲しみ
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Comments(7)
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ももりゅう
at 2007-10-14 11:56
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「生き残った者の悲しみ」完走、おめでとうございます!
milkyさん、さすが深く観ていますね~。 私とは大違いです^^;; このドラマは80年代と90年代の両方を描いていますよね。 実際のビョンホンさん自身は、このチャンミョンよりほんの少し後の世代かな? でも、きっと学生運動などの名残はあった頃に大学生だったんじゃないかと思います。 ですから、私なんかよりもチャンミョン自身の感覚は理解出来たのでしょうね。 色々な役柄を通して、様々な体験をして来たビョンホンさん。 韓国の人でなければ本当には理解出来ないのかもしれませんが、 ビョンホンさんを通して、私も韓国という国、そして人々を知って行きたいな、 と思います。 まだまだビョンホンさんの作品で、未見のものもたくさんあるので、 すぐにとはいきませんが、またこの作品もいつか観直して見たいと思いました。
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mitamasa
at 2007-10-14 21:21
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milkyさん、こんばんは
やっと昨日「生き残った者の悲しみ」を観始めました。 milkyさんのお蔭で、暗いということは気にならず、とても興味深く観られそうです。 私の学生時代には、もうの~んびりしていましたが、兄の頃は、学内での闘争があり、休校ばかりだったようです。 韓国のドラマ・映画を観る限り(といっても、ほんの一部しかまだ観てませんが)、社会系のものは、南北の民族分断がいつも根底にあると思います。 そしてその次に、この時代の学生運動。 韓国でも、今の若者には縁がないのかも知れませんが、大人(中年)の青春時代はこうやって大きく揺れていたんでしょうね。 そうして、今の韓国の発展・成長があったんでしょうから。 もう、日本ではどうやって成長したかも忘れるくらい、のんびりしてますね。
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mitamasa
at 2007-10-14 21:22
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続きです^^
そうそう、私の子供の頃は、ストライキはよく聞きましたが、今は全く聞きません。鉄道会社も先生も。 でも、去年の今頃ソウルに行ったとき、市庁前広場でデモがありました。かなり離れた所にも警察車両(バスのような)があり、物々しい雰囲気。 何かと思ったら教職員のデモだと言うことでした。 なんか、不思議と懐かしく感じました。 で、話は違いますが、2話で剣道のシーンがありました。 ビョンホンシがしていた緑の手拭、県立山形南高校OBと染められていて、なんか可笑しかったです^^
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lee_milky at 2007-10-15 00:13
☆ももりゅうさん。。。
>「生き残った者の悲しみ」完走、おめでとうございます! ありがとうございます。 >milkyさん、さすが深く観ていますね~。 私とは大違いです^^;; 多分、これは、私とももりゅうさんの年齢の違いだと思います。 私は、小学生の頃、浅間山荘事件とかよど号ハイジャック事件の映像を見て、なんとなくその頃の雰囲気だけは知っていましたから。 事件の背景や真相は、当時は全くわからず、大人になって、本を読み、初めて知りましたが^^; 多分、私より10歳も若いビョンホンシも、韓国では私と同じような経験をしているのではないでしょうか? それが、韓国の俳優さん達の、日本の同年代の俳優さんにはない強みなのかも知れませんね。
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lee_milky at 2007-10-15 00:21
☆mitamasa さん、こんばんは。
そう言えば、日本では、学生運動のことを描いたドラマがありませんね。 学生運動に限らず、重いテーマのドラマは流行らないのでしょうか? ほとんど、軽い恋愛ドラマばかりのような気がします。 そうですね。私達がこどもの頃は、ストライキがよくあっていました。 今は、ストライキもデモも、ほとんど無いようですが。 韓国では、デモは、今もよくあるようですね。 私が、初めてソウルに行った時もデモがあっていました。 剣道の手ぬぐい? 全然気付きませんでした。 それにしても、なぜ山形県?
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cinema_61
at 2007-10-17 16:03
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「生き残った者の悲しみ」は73歳の叔母がDVDを買い、感動したといって送ってくれたのを観ました。
テーマは重く、ビョンホンシーもそんなに格好良くないけど、真剣に取り組んでいる姿には心打たれました。 二人の対照的な女性に惹かれるチャミョンを、時空を異にして演じ分けているのもさすがだと思いました。(彼は当時24歳くらい?) 昔、学生運動に没頭していた友人を知っていますがララのような女性は知りません。きっと日本も60年代にはあのようなことがあったのでしょうね。
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lee_milky at 2007-10-17 21:59
☆cinema_61 さん、こんばんは。
24歳の彼は、このドラマのシナリオを深く掘り下げて読んだのでしょうね。 真剣に取り組んでいる。。。まさにその通りだと思います。 >日本も60年代にはあのようなことがあったのでしょうね。 私の学生時代の指導教官は、3人兄弟の三男でしたが、長兄を東大の学生紛争でなくし、医学部に進学した次兄を自殺でなくしていらっしゃいました。 それで、ご両親が、おまえは、東大に行かなくても、医者にならなくても良いから、生きてくれと言われ、医学部を中退し、デザイン学部に入り直した方でした。 この先生が、昭和五年生まれでしたから、東大生だったお兄さんは、50年代に学生だったのでしょうか? 50年代、60年代は私達には想像もつかない壮絶な時代だったのでしょうね。 ところで、叔母様は、ビョンホンファンなのですか? 身近にお仲間がいらして良いですね。
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