先週の金曜日に、勤務校で数学の公開授業がありました。
1年生の授業で、これまで学習してきた方程式を利用して文章題を解くというのが課題でした。 中学校は教科担任制なので、他の授業がどのように行われているのか、日々、どのように変容しているのかがわからないのが実際のところなので、他教科の授業を観るのは興味深いものです。 今回は、まず何をxに置くかを自分で決めるというところから始まったのに、驚きました。 私達が中学生の頃は、まずは例題で解き方のパターンを知ってから練習問題を解いていたものでしたから、型にはまらない今回の授業展開に感心しました。 でも、この方法があまりに高度すぎたのか、戸惑う生徒が多くて、立式できない生徒が続出しました。 そこで、当初の計画では、班で自分の解き方を発表しあって、自分とは別のものをxと置いたときの立式の方法を友だちに学ぶことになっていましたが、授業者の担任のとっさの判断で、班内での教えあい学習に変更になりました。 実は、今年の1年生は教えあい学習が苦手です。 私のこれまでの経験では、低学年では教えあい学習が好きだったのに、3年生の後半頃から、受験に目覚めた成績の良い生徒が、一時期教えあい学習を面倒に思うものです。 だから、これまでは、こういう傾向が見え始める三年生のこの時期に、学年で取り組みを行って来ました。 ところが、今回は未だ1年生。 どうしたものかと、考えましたが、未だ、学年の全生徒に伝えるのは早い気がしました。 そこで、前日の木曜日に行った学年学級委員会で、まずは学年委員長と学級委員に教えあい学習の大切さを伝えたばかりでした。 さて、この公開授業の行われた1組の3班には、数学の得意な学年委員長のA君と苦手な学級委員のB君が居ます。 班学習を指示された直後から、A君はB君に一生懸命に教えはじめましたが、なかなかB君は理解できません。 次第に必死になったA君の声が大きくなって、そこに授業を見学する教員が集まりはじめました。 沢山のギャラリーの見守る中、B君はあきらめ顔になりました。 でも、そんなとき、担任から、「班の教えあいをそろそろ終わろうと思いますが、あと少しで分かりそうな人は居ますか。」と、声がかかりました。 すると、B君が「はい。」と、右手を高く上げて、大きく返事をしたのでした。 果たして、班学習は、後2分時間が延長され、B君は何とか理解することが出来ました。 結局、班学習は、方法も時間配分も計画からははずれてしまいましたが、この数学の時間は、生徒にとってとても貴重な時間になったと思います。 授業の終末に、「今日、はじめ、自分一人で考えた時には分からなかったけど、班での教えあい学習で、理解できた人は手を挙げて。」と担任が言ったとき、全員の手が上がりました。 それを受けて、「今日は、初めての文章題で難しかったし、沢山の先生方に囲まれて緊張もしたと思うけど、教えた人も教えられた人も最期まで諦めず、頑張りましたね。」担任が声をかけたとき、生徒の顔はニコニコと輝いていました。 「おわり」の合図で、学級委員のB君が声高らかに「起立」の号令をかけました。 実は、先月の初めに眉を整えて登校したB君に、私は厳しく指導しました。 そして、眉が生えそろうまで学級で司会をしたり、号令をかけてはいけないと言い渡しておいたのです。 つまり、約一月の間、B君は学級委員会で叱られたり、雑務だけはさせられて、目立つことはさせて貰っていなかったわけですが、たまたま、この日の前日に、ゲジゲジに不揃いに生えかかった彼の眉を確認して、学級委員としての仕事を全面解禁したばかりだったのです。 放課後、廊下の戸締まりをする私の所に、A君とB君が駈けてきました。 二人とも上気した顔をしています。 そして、「先生!!昨日の学級委員会が役に立ちました。」「僕、一生懸命に説明しました。」「僕も、分かるまで諦めませんでした。」と言う彼らに、私も「先生も、おどろいた。なにせ、昨日の今日だもんね。二入とも頑張ってたから、先生感激した!!」と、ちょっと興奮気味に答えました。 昨日の話し合いの時、同じクラスの学級委員のCさんに「A君は良く教えてくれるし、分かりやすいけど、上から目線だから嫌だ。」と、指摘されたA君でしたが、今日は、終始B君のことを思って一生懸命でした。 友だちの前では弱みを見せたくないB君が、今日は分かった振りをせず、分かるまでA君の説明に耳を傾けていました。 立ち去っていく二人の後ろ姿を見守りながら、私はしばらく廊下に佇んでいました。 「生徒も頑張っているのだもの。私も頑張ろう。」そう思い、深呼吸して職員室に向かいました。 ここ数週間、私は様々な問題を抱えていたからです。 その内の一つにD君の問題があります。 D君は2学期に入ってから不登校になりました。 そのD君の家に数回家庭訪問に行き、彼を学校に連れてきました。 教室には入れませんでしたが、先々週は二日置きには自分で登校できるようになりました。 そして、先々週の金曜日には、一時間だけ教室にも入ることが出来ました。 でも、先週に入って彼はまた登校できなくなりました。 その原因が私にあるというのです。 ある専門機関から、そう連絡があったと聞いて、私は耳を疑いました。 彼には、登校刺激をしてはいけないのに、私が無理をしていると。 その担当者は、まだD君にも一度しか会ったことが無く、私も一面識も無いのにです。 私と彼が、どんなに時間をかけて対話し、彼がどんな様子で一時間の授業を受けたかも知らないのにです。 はじめに彼が学校に来たのは、私が迎えに行ったことがきっかけだったのに、その私がなぜ全否定されなければならないのでしょう。 「それは、何かのまちがいだ。」とは、思ってみたものの、流石に彼の家に行く気がおこらず、他の問題も抱えているので、先週は仕事に行くのがやっとという生活をしていました。 でも、生徒の姿を見たら、休日にゆっくり休養して鋭気を養ったら、また彼の家に行ってみようと思いなおすことが出来ました。 そして、昨日、「アイ・カム・ウイズ・ザ・レイン」を観てきました。 福岡県の準新作映画ばかりを上映する小さな映画館で、今週の金曜日まで「アイ・カム・ウイズ・ザ・レイン」が公開されています。 6月の公開当時に3度この映画を観ましたが、3ヶ月ぶりに観たら、随分と印象が異なりました。 以前は猟奇的な場面や艶っぽいビョンホンシや人の子に惑わされていたのかも知れません。 あるいは、私の今の精神状態が作用したかも。 とにかく、私は、この映画を観ながら、色々考え、見終わるやいなや、迷うことなく、D君の家に向かいました。 D君の家は、土曜日でしたが、家族は不在で、彼だけが居ました。 彼は、カーテンの隙間から、私を確認すると、ニコニコ笑いながら出て来ました。 「クラスマッチ、来なかったね。」と私が言うと、「行けば良かった。先生、何で今週は来なかったんですか。」と、甘えたことを言います。 今週末は遠足があるので、それには参加するように言うと、「遠足デビューより、その前に行って、慣らしておきたい。」と言いました。 結局、問題が解決したわけではないけれど、私は随分気が楽になって、再び映画館に引き返し、再び「アイ・カム・ウイズ・ザ・レイン」を観ました。 すると、今度は、素直に、彼に登校刺激を与えてはいけないという見解の担当者にお会いして、どうすればよいか相談しようという気持ちになりました。 この映画、日本ではヒットしなかったけど、厳しい人生を送っている人の多い国では受け入れられるかも知れないと、ぼんやり思いました。 韓国では、前評判は上々のようですね。→☆ まずは、韓国でのヒットを祈っています。 映画の詳しい感想は、また後ほど。
by lee_milky
| 2009-10-04 14:16
| +I come…
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Comments(2)
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