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K君を思う

最近、共生の大切さを痛感しています。そして、K君とその周りに居た人たちのことを度々思い出しています。



 それは、もう今から20年以上も前の話です。私が初めて担任をした学年は、9クラスの担任のうち、私と同じように初めて学級担任をする教員が4人も居る若い学年でした。中には、破天荒な担任も居て、先輩の先生からしかられることも多かったのですが、みんな仲良く、今でも教員だけの同窓会をしているほどです。その中に、F先生という女性の同僚が居て、同じ女性同士ということもあり、年齢も近いので、よく二人で食事に行っては愚痴をこぼしあい、時には涙を流しながら、励まし合っていました。
 そのF先生のクラスにK君という車いすに乗った男の子が居ました。当時の生徒から聞いた話では、K君は幼稚園の時までは、普通にみんなと一緒に元気いっぱい駆け回って遊んでいたそうですが、ある日、原因不明の高熱におかされました。熱が下がり、数日後、幼稚園に登園した時には、手も足も言葉も不自由になっていたそうです。そのため、K君は車いすの生活を余儀なくされ、みんなと一緒に駆け回って遊ぶことはできなくなりましたが、地元の小学校を卒業し、地元の中学校に入学してきました。
 中学生になったK君は体が成長し、車いすのままK君を1階から3階まで運ぶのは大変でした。いつもクラスメートが7~8人で彼の周りを取り囲み、よいしょよいしょと運んでいました。勉強のできるK君は何とか動かすことのできる片手でノートをとることができましたので、5教科の授業はあまり不自由は無かったようですが、実技教科や学校行事の時は大変でした。実技教科では、教科担任が、出来るだけK君が不自由なく参加できるような授業をと工夫しました。また、行事の時には、クラスで、子どもたちが話し合い、K君ルールを作って、そのルールを認めて貰えるように学級から全校へむけて申し入れていました。例えば、ソフトボールのクラスマッチの時には、K君の打順が来たら、他の人が代打で出て、出塁する時には、K君の車いすを押して走ります。こんな風に工夫してみんなで切り抜けたから、K君がみんなに置き去りにされているところは見たことがありませんでした。手も不自由なK君は自力で車いすを動かすことができなかったため、いつも友だちが側に居て、みんなでじゃれ合うように車いすを動かしていました。K君が入学した初めは、私もK君のことを考えて、授業の予定を立てていましたが、こんな風に、クラスのみんながどんな困難でも考えてクリアするので、次第に特に配慮することなく、他学年同様の授業をするようになりました。
 彼が3年生になった時、「銅板レリーフ」をすることにしました。銅の板の上に鏨(たがね)の先を当て、その頭を金槌でたたいて、銅の表面に凹凸をつける作業です。そこで、K君の周りの生徒は、交代でK君のたがねを持つことを決めました。それをK君が金槌でたたきます。K君の手は不自由なので、当然、的がはずれて、持っている人の手を打ち付けることもあります。さらに、K君は口の周りも麻痺しているため、よだれが常に出ている状態で、真剣になると、その量が増えるので、友だちの手を打たないように真剣になればなるほど、友だちの手は彼のよだれでぐしょぐしょになりました。また、次の課題ではだまし絵を考える授業をしました。授業の途中でK君の隣の子が大声で「K君が大変!!」と言うので、そちらを振り向くとK君の顔が紫色に変色し、気を失いかけていました。大急ぎで救急車を呼んだ後、クラスの生徒に事情を聞いてみると、朝から様子がいつもと違っていたので、いつも以上にみんなで彼の様子を見守っていたそうです。彼の変調にはご家族の方も気づいておられず、気づいていたのは、クラスの生徒だけだったのです。後で知ったことですが、K君は集中しすぎると気を失うことがあるそうで、詰め碁をしながら気を失ったこともあったそうです。私は、彼とご家族に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになりましたが、お母さんからは「大好きな囲碁と同じくらい集中できたということだから、気にしないでください。それより、友だちが家族も気づかないことに気づいていてくれたことに感謝したい。」と言って頂きました。
 私は、今でも時々K君と周りの人たちのことを懐かしく思い出します。手足は不自由だったけれど、やんちゃな性格はそのままに、いつも明るかったK君、時には彼とけんかしながらも、彼を支えたクラスメート、彼らを常に陰で支えていた担任のF先生のすばらしさに見習うべきことがたくさんあると思うからです。
 彼は、中学卒業後は地元の高校に入学し、無事卒業しましたが、その後、病気が原因で亡くなりました。未だ20歳でした。
by lee_milky | 2010-09-29 02:12 | Comments(0)
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