「The Influence(インフルエンス)」の日本語字幕版DVDを見ました。
以前、ネットからダウンロードしたものを見ていたのですが、PCでしか再生できず、字幕もなく、時系列がバラバラなので、あんまり面白いと感じていませんでした。 だから、この夏、韓国で日本語字幕版が上映されると聞いても、あまり心が動きませんでした。 この映画がこんなに良い映画だと知ってたら、「悪魔を見た」と「The Influence」を見に、もう一度韓国に行くんだったと、ちょっぴり後悔しました^^; この映画は、1907年から2010年までの100年以上にわたる、時空を超えた壮大なストーリーです。 ビョンホンシは、その中で、100年前、日韓併合の犠牲となった朝鮮王族のイ・ソルを演じています。 イ・ソルはその後、Wという二つの人格に別れ、時空を超え、100年後の今を生きているという設定です。 例えて言うなら、一人3人格役といったところでしょうか。 映画は、1907年冬の漢城(=ハンソン=現・ソウル)から始まります。 前年、韓国統監府が設置され、その初代統監になった白龍さん演じる伊藤博文が熱弁をふるう中、朝鮮皇族の一人として、その末席を汚すイ・ソルは、心ここにあらずといった風情です。 いや、その場に居合わす皇族たちの本音は、イ・ソルと何ら変わりないはずです。 しかし、伊藤博文の話などまともに聞くことが出来ないと、ストレートに態度に示すことが出来るのは、皇族とは言え、女官との間に生まれ、アウトローを気取っているイ・ソルだけです。 そのイ・ソルの前をハン・チェヨンさん演じるDJCのママJが通り過ぎます。 私は、ウイスキーの中で浮遊するチェヨンさんをはじめに見たので、あまり美しいとは思っていなかったのですが、こうして着飾った姿を見るととても美しい女優さんです。 そして、彼女に目配せするイ・ソルの表情。。。ビョンホンシ、ホント上手い!! 彼女を見失って、身を乗り出すイ・ソルを目で殺す皇帝。 パンフレットの中にJからのDJCへの招待状を見つけるイ・ソル。 「오후 두시 당신을 초대합니다.(=午後2時、あなたをご招待します。)」 この招待状、縦書きですが、全文ハングルです。 漢字を使用しなくなったのは、日本の敗戦以降じゃなかったかと思って、ネットで検索してみたら、早くからハングルのみで表記する風習もあったようです。 さらに、ハングルを普及したのは日本人というのにも異論を唱えている方もいらっしゃるようです。 さて、招待を受けたイ・ソルは、DJCに行きますが、未だ2時になっていないため、中は未だ廃屋。 仕方なく、表で子どものように時を待つイ・ソルが好きです。 金はあるが頭は空っぽ~みたいな^^ 撃つと弾の代わりに花が出てくるイタリア製の拳銃も小道具としてみごとです。 イ・ソルの懐中時計の針が午後2時を指し、DJCのドアを再び開けると、そこは、高級クラブに。 イ・ソルは、叔父である皇帝に呼ばれ、皇太子の旅行に随行するよう頼まれたことが余程嬉しかったのか、Jに嬉しそうに早口でまくし立てます。 しかし、実際には、イ・ソルは皇太子の身代わりとして死ぬために随行させられるのですが。 Jは、既に事情を知っていて、心配そうな顔。 そして、「何があっても品位を失わないように。」と、忠告します。 その忠告に答えるイ・ソルの台詞の中に「俺がハーグに行っていれば、きっと会議に参加できたよ。」とありますが、これは、この年の6月、大韓帝国皇帝の高宗(=コジョン)がオランダのハーグで開かれていた万国平和会議に密使を送って、第2次日韓協約の無効を訴えようとしたが、相手にされなかったことを指していると思われます。 翌月20日、高宗は大韓帝国皇帝を退位させられ、子の純宗(=スンジョン)に譲位させられますから、イ・ソルの言う叔父とは純宗のことでしょうか。 でも、家系図を見てみると、純宗は高宗の長男なので、彼を伯父でなく叔父と呼ぶのは変ですし、純宗は子どもが居ません。 さらに、後のシーンで、伊藤博文が皇帝に激しく抗議している内容が「皇帝のせいで日本が大恥をかいた。朝鮮が日本の植民地などと・・・。」と言っていることから、季節の設定こそ違うものの、このことこそ、ハーグで第2次日韓協約の無効を訴えようとしたことを指しているのでしょう。 と、すれば、イ・ソルがその命を守った皇太子とは、純宗のことです。 しかし、命拾いをした純宗が即位した4日後の1907年7月24日、第3次日韓協約を結び、日本は韓国の内政権を得、韓国軍隊の解散。 このように、次第に朝鮮半島は日本の支配下に組み込まれて行きます。 家系図ではイ・ソルらしき人物は見あたりませんが、高宗には二人の兄が居て、彼は、この二人のうちいずれかの子どもという設定でしょう。 まさに、歴史に翻弄された人物と言えます。 脳天気に旅行に出た直後、日本軍に襲われ、車上で皇帝からの手紙を読み、全てを悟った後のイ・ソルの変容がみごと。 特に、車上で軍服に着替える時の表情がたまりません。 ビョンホンシ、ここに有りって感じです^^ ついに、日本軍から逃げ仰せない状況になった時、行く手にはJが。 そこで、イ・ソルは彼女に言われた言葉を思い出し、皇族として潔く死ぬ覚悟を決めます。 日本軍の前に倒れたイ・ソルに駆け寄るJに彼は、例のイタリア製の銃をイタズラっぽく見せます。 これだけでも、充分面白いお話しなのですが、物語は更に先に進みます。 瀕死のイ・ソルをDJCに連れ帰ったJは「ダメだ。」という何者かの制止を振り切って、秘密の部屋の中の巨大なウィスキーのボトルの中に入っていきます。 すると、そのボトルの中から、ほとばしり出たものがイ・ソルに降りかかり、彼は息を吹き返しました。 でもそれは、生き返ったのではなく、彼は不老不死の人物になったのでした。 Jはボトルの中から出ることができるのか・・・。 老いることのないイ・ソルの、そして、日帝の傀儡となった純宗の行く末は・・・。 計算され尽くした感満載の、ホント、良くできた映画です。 イ・ジェギュ監督って、キム・ジウン監督とは全く異なるタイプの監督さんなのでしょうね。
by lee_milky
| 2010-10-11 23:48
| +The Influence
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