漫画「遙かなる赤い夕日」を読みました。
著者の森田拳次さんは、生後3ヶ月で旧満洲に渡り、引き上げ後、漫画家になった方です。
この本は、日帝時代の満洲での日本人の生活と、戦後満洲からの引き揚げの苦労を描いた作品です。
ご承知の通り、新作「奴奴奴」は、日帝時代の満洲の馬賊を描いた映画です。
舞台は同じでも、中心に描かれているのが対極に居る人物なのですから、自ずから、この漫画本の内容と映画の内容は全く異なるでしょうが、それでも、「奴奴奴」の予習になるかもしれないとの思いから、レビューにすることにしました。
「満洲國」とは
昭和7年(1932年)、日本の主導のもと、中国満蒙地域(現在の中国東北部)に建国された国。
当時、既に滅亡していた清朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀(あいしんかくら・ふぎ)が執政に迎えられた。
満洲國は公式には
五族協和の王道楽土を理念とし、
アメリカ合衆国をモデルとして建設され、アジアでの多民族共生の実験国家であるとされていた。五族協和とは、満蒙漢日朝の五民族が協力し、平和な国造りを行うこと、王道楽土とは、西洋の「覇道」に対し、アジアの理想的な政治体制を「王道」とし、満洲國皇帝を中心に理想国家を建設することを意味している。
昭和20年(1945年)、日本の敗戦とともに、地上から消滅した幻の国家である。
「満洲國」建国の時代背景
日清戦争・日露戦争・第1次世界大戦において戦勝国となった日本は、蒙地域に権益を確保していたが、ソ連の南下と中国国内の民族意識の高まりにより、その権益が脅かされるようになった。
また、日本国内では、昭和4年(1929年)、米国ニューヨーク・ウォール街に端を発した「世界恐慌」の余波と、天候不順による農作物の不作のために、経済状態が危機的状況に陥り、対外膨張と軍国主義に傾斜せざるをえなくなっていた。
そこで、日本軍部は、満蒙地域の領有を図り、昭和6年(1931年)、当時満蒙地域に駐屯していた関東軍に「満州事変」を引き起こさせ、満洲國を、建国した。
日本からの満洲國入植者の生活
日本国内では、国策として「五族協和」「王道楽土」を御旗に新天地「満洲」への移民が奨励され、農家を中心に国内での生活が逼迫していた人々が満洲に続々と入植した。
しかし、新天地とはいえ、満蒙地域の気候は厳しく、匪族
(=馬賊)が出没するなど、治安も悪かったので、この地での開拓は困難を極めた。
それでも、日本人は、他の4族より優遇され、開墾するために与えられた土地も現地民から略奪したものが多かったという。
<注>下線部はこの漫画に記述があったのではなく、milkyの記憶や他のサイトの記述によるものです。