영력(言霊)ことだま

今日は、午後から、少年の主張大会に行って来ました。
世相を反映してか、「命」をテーマにした主張がたくさんありました。
今年は、特に主張の内容が良く、中学生に教えられました。

その中で、特に心に残った作品を2つご紹介したいと思います。

ひとつめは、私の勤務する学校の3年生の女の子の主張です。
彼女は、陸上部に所属しています。
特に目立った記録を残すことはできませんでしたが、いつも元気いっぱい、真っ黒に日焼けした顔に笑うと白い歯が印象的です。
この元気印の彼女が、難病と闘っているとは、誰も思わないでしょう。
でも、彼女は、生まれ落ちた時から入退院を繰り返し、幾度と無く死の淵から帰ってきたのです。
この9月にも手術のために入院しますが、今は、手術の恐怖よりも、手術することにより、薬の量が減り、副作用による体重の増加が今より抑えられることに期待を寄せる逞しい彼女です。

この彼女が、「私はなぜ病気に生まれたの?」とお母さんを困らせたこと、病気のために諦めなければならないことがたくさんあったし、涙で目が腫れることもあったこと、そして、入院中に仲良くなった友達が何人も亡くなっていったことを切々と語っていました。
これまでに、何度も読み返した原稿でしたが、日ごろの元気に笑う彼女の姿がオーバーラップし、担任と二人、並んで座って、涙ながらに聞きました。

でも、彼女は、こう続けます。
病気だから経験できた良いこともたくさんあった。
入院中に友達からメールを貰ったこと、クラスのみんなから手紙をもらったこと、そして、何より病気だからこそ、明るく強くなれたこと。

そして、こう結んでいます。
今、いじめや差別を受けて、死にたい人、人生に疲れて、自殺しようと思っている人、絶対に死なないで下さい。
生きていたら、良い事なんてたくさんあります。
だから、今ある命を大切に、毎日を過ごして下さいと。



ふたつめは、隣の中学校の2年生の女の子の主張です。
彼女の学校は、昨年、創立50周年を迎え、その記念に、創立当時からの映像を収めたDVDが生徒全員に配られたそうです。
彼女は、家に帰って、このDVDを何度も繰り替えし見たので、映像のバックに流れているその時代時代のヒット曲を覚えてしまったそうです。
彼女が特に好きになったのは、かぐや姫の「神田川」。
主張のさなか、彼女が「あなたはもう忘れたかしら。赤い手ぬぐいマフラーにして。」と歌い出したのには、度肝を抜かれましたが、彼女は、この部分が特に好きなのだそうです。
それは、昭和という時代の生活の苦しさと温かさが描き出されているから。
その他にも、「小さな石鹸カタカタ鳴った。」「ふたりで行った横丁の風呂屋」「三畳一間の小さな下宿」等、昭和の歌には、悲しいようなそれでいて嬉しいような、寂しいようなそれでいて温かいような。。。そこには単純に一言では言い表せない様々な思いがいっぱい詰め込まれている。
それに引き替え、平成の歌は、楽しい曲はとことん楽しく、悲しい曲はとことん悲しく、まるで、この世には楽しいことと悲しいことの二つしかないみたいだと、彼女は言います。
そして、歌が表すように、今の時代は、高級なものは良い、そうでないものは駄目、楽しい人生だから生きる、楽しくない人生だから死ぬ、そんな感じになっていると続けます。

そして、昭和のように必至に生きようとしなくても楽に生きられる時代だからこそ、一生懸命に生きていくことが必要で、そうして懸命に生きていればこそ、日常生活の中のほんの些細なことにも、様々な宝物を見つけることができるのだと結んでいます。

私は、この主張を聞いて、彼女の感性の素晴らしさに驚きました。
たった一枚のDVDの中から、これだけのことを見いだした彼女。
彼女が言うように、私達の日常の中には、このような宝物が、たくさん眠っているのでしょう。
その宝を見つけられるかどうかは、自分次第だと気付かされました。


最後に、今日のタイトルの영력(言霊)ことだまは、審査員の方の結びのお話しの中に出て来た言葉です。
言葉には魂が宿っているというのは、日本で古くから信じられてきたことだそうですが、このことが、科学的にも証明されたのだそうです。
「ちくちく言葉」は、脳に悪影響を与え、人の生きる気力を減退させ、一方「ふわふわ言葉」は、逆に生きる源を潤すのだそうです。
そして、大事なことは、この影響は、言われた人だけでなく、言った人にも表れるのだそうです。
ネット社会やテレビやラジオでは、耳をふさぎたくなるような「ちくちく言葉」が氾濫しています。
いや、それだけではありません。
自分自身の言葉はどうか。
職場では?
家庭では?

そんなことを考えさせられた午後でした。


 
by lee_milky | 2007-08-05 22:29 | Comments(4)
Commented by orugann at 2007-08-06 01:29 x
milkyさん こんばんは
>平成の歌は、楽しい曲はとことん楽しく、悲しい曲はとことん悲しく、まるで、この世には楽しいことと悲しいことの二つしかないみたいだと
この中学生の方、凄いですね。今の時代をしっかり捉えて見えて・・・

たまたま、NHK(8月4日教育TV)の「戦争と平和を考えよう」に寄せられた中学生のメールの声や、インタビューを見ていました。
子供と言うより、もう大人、しっかりした主張が聞けて驚きました。

そこへ、このお話、感銘を受けました。「自分で、物事を考える、主張できる」というのは、流されずに生きていくことに繋がるのですね。なんだかうれしくなりました。ありがとうございます。

>自分自身の言葉はどうか。
つい、家族には、「ちくちく言葉」を使ってしまいます。反省・・・
Commented by lee_milky at 2007-08-06 07:31
☆orugann さん、おはようございます。
>NHK(8月4日教育TV)の「戦争と平和を考えよう」
この番組、録画に失敗したんですよ^^;
こうして、番組のお話を聞くと、今更ながら、失敗が悔やまれます。
中学生というけれど、そこには、もう、立派な大人の顔がありますね。

今日は、原爆広島投下の日。
これから平和学習があります。
午後は、学年生徒会のメンバーと文化祭で行う平和のメッセージの打ち合わせ。。。
orugann さんのコメントを読ませて頂いて、彼らの感性を最大限引き出せるようなミィーティングにしなければと、改めて思いました。
ありがとうございました。
Commented by yumi at 2007-08-07 01:21 x
milkyさん こんばんは。

とても素敵なお話、ありがとうございました。

先日、阿久悠先生が亡くなられたあと、氏の特集を拝見していて、昭和の歌の暖かさを感じ取ったばかりです。
平成の音楽は全部似通って聞こえるし・・・歳だから?と思っていたのに、中学生でもちゃんと分かる生徒さんがいらしゃるなんて、感激しました。

「命」、どれだけ大事なものか・・・向き合ってみた方の意見は心に刺さります。

「言霊」・・・生前、父がよく口にしていました。
初めて教壇に挙がる日、一枚の便箋に、
「君の言葉、一つで温かくなる場合も冷たく凍りつく場合も相手にはあるんだ、なぜなら、そこには言霊が存在しているから、そして、自分の事を指す時に、先生は、と言う言葉は遣ってはいけない。必ず、私は。といいなさい」
でも、難しいですよね・・・家では「チクチク」になっちゃいます。
Commented by lee_milky at 2007-08-07 06:50
☆yumiさん、おはようございます。
流行歌は、世相を反映するとは言うけれど、そこから、過去の世相を読み取る中学生が居たとは、私も、驚かされました。

阿久悠先生の歌、中学生だった頃、本当に楽しみに聞いていました。
それに引き替え、最近の悲しい歌は、気が滅入るのでいやでした。
それがなぜなのか、深く考えたこともなかったのですが、その答えを中学生の彼女がくれました。

言霊の話も、数年前、卒業式の答辞で初めて聞きました。
考えてみたら、いつも中学生に教えられています^^;

お父様のお話しは、素晴らしいですね。
それぞれの家庭にそれぞれの教育があるのだなと感じ入りました。

私が教員になった日、宝石商をしている母と同じ歳の従姉妹が、ネックレスとブレスレットをお祝いにくれ、従業員の労働運動の余波で、倒産してしまったそれが、西ドイツの宝石商の品物だということを話してくれました。
そうすることで、私に釘を刺したのだと思います^^;

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