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신의 지팡이(シネチバニ/神の杖)




정동주(チョンドンジュ/鄭棟柱)著 根本理恵 訳 部落解放研究所 発行 「신의 지팡이(シネチバニ/神の杖)」を読みました。

私は、この本を市立図書館で偶然見つけました。
韓国語を楽しく勉強するために、韓国語の詩集を借りて和訳してみようと思い立って韓国関係の書棚を物色している時に見つけ、根本さんのお名前にひかれて借りたのが、夏休みの終わりの頃だったと思います。

この本を読んではじめて、私は、根本さんがどんなに感性の素晴らしい方なのか、韓流ブームのずっと以前から確かなお仕事をされて来たのかを知りました。

この本は、朝鮮で、古くから被差別の立場に置かれた백장(ペクチャン/白丁)という身分の人たちの今と昔を綴ったものです。
この出版にあたっては、どんなに多くの方がご苦労されたことでしょう。
重くデリケートな内容ですが、根本さんのお仕事を紹介する意味で、このレビューを公開しようと思います。 





小説「神の杖」翻訳までの道のり
1993年4月23日:韓国慶尚南道晋州市の慶尚大学において衡平社創立70周年記念国際学術会議開催。このとき、本書の著者、鄭棟柱氏が日本の部落解放研究所に小説「白丁」を寄贈。
1994年6月:鄭氏来日。奈良市で開催された第16回部落解放研究社所の記念講演として「白丁に対する差別の現状と解放のための課題」をテーマに講演。このとき、部落解放研究所より、全10巻にも及ぶ「白丁」の日本語翻訳が進んでいない事情が鄭氏に伝えられ、それを知った鄭氏より白丁をテーマにした3巻程度の小説を新たに書き下ろすことが提案される。
1995年4月:約束の小説「神の杖」が誕生。部落解放研究所が、当時、既に「『風の丘を越えて-西便制(ソピョンジェ)』(李清俊)」の翻訳でその実力が評価されていた根本理恵氏に日本語訳を依頼。
1995年12月:韓国で上下2巻の体裁で発刊。
1996年9月:鄭氏来日。根本氏による翻訳原稿を推敲。
1997年2月15日:小説「神の杖」日本で発刊。翻訳が依頼されてから発刊に至るまで1年半を要した理由については、翻訳を依頼した部落解放研究所の当時の所長であった友永健三氏が本書の解説の中で言及しているが、本書の発刊の目的は、差別の撤廃と人権確立にあるため、小説の中に頻出する「特殊語」の表現について慎重に議論がなされたからである。また、訳者である根本氏御自身も本書の訳者後書きの中で、翻訳作業で最も困難だったのは、白丁の人々が使っていた言葉を日本語に置き換えることと差別語の解釈であったと記している。



白丁は屠殺を生業にし、そのため古くから穢れた者として、人格は軽蔑や侮辱の対象となり、人権はたやすく蹂躙されてきました。
朴順女・玉女姉妹は幼い頃より美しく聡明でしたが、白丁の末裔であるため、その行く末には暗澹たる雲が立ちこめていました。
そこで、父親の死後、母親は彼女たち二人を連れ、故郷も名前も捨てて全く別人として生まれ変わって生きることを選択します。
異珠となった姉の順女は、自分が白丁の出身であることがあばかれるのを恐れ、他人との付き合いをできるだけ絶ち、熱心に勉強して大学教授にまで上りつめます。
一方、勝ち気な妹の玉女は明珠となっても白丁の末裔として堂々と生きることを選び、人権運動に身を投じ、交際相手と共に謎の死を遂げます。
姉の異珠は、この二人の死を結婚に反対されたための心中と思い、二人を主人公に小説「不遇」を書き上げます。
そして、この小説がベストセラーとなり、多くの人に読まれたことによって、二人の死の真相や白丁に関わる記述の誤りがつまびらかにされて行きます。
読者は、この一冊から、小説の主人公である異珠の半生と、小説中小説の「不遇」のストーリーと、これに異論を唱える人々の言葉から、白丁に対する差別の今と昔、それに、白丁に面連と息づいてきた崇高な文化が次第に紐解かれていく醍醐味を経験することができます。
中でも、私が特に感銘を受けたのは、人々が忌み嫌う屠殺に対する意味づけです。
白丁の人々は、単に動物の命を奪う殺生をしないように、いくつもの儀式的な形式を経て事にあたり、動物の魂が「神の杖」に導かれて西方浄土に行けるようにします。
「神の杖」とは、本来、屠殺に使う道具で、杖では無く刃物なのですが、精神的にも物理的にもこれ以上ないほど丁重に扱われ、神聖なものとして代々受け継がれていきます。
その「神の杖」を中心とした46にも及ぶ屠殺に関わる複雑な工程には、これまで全く知らなかった新しい世界観があり、それを読み進めるに連れ、動物の魂が浄化されるのと同時に、読み手の感情も浄化されて行くようです。
私は、46番目の「天空を閉めて、屠殺場の門を閉め鍵を掛ける工程」が終わったと同時に、衝撃的な感動を覚え、自分自身の偏見に終止符を打つことができました。
小説「神の杖」の中で、「不遇」の著者である異珠は、いくつもの経験を経ながら次第に自らの白丁という身分を受け入れていきますが、私もまた彼女と共に白丁という身分の精神世界に引き込まれていったからこそ、このような読後感を味わうことができたのだと思います。
その、私自身の感情の変化は、この本の圧倒的な構成力の良さと筆者の豊かな経験がもたらすものです。
そして、韓国語で書かれたこの小説が、これほど私の心に染み入ったのは、他でもない根本理恵さんの語学力と豊かな感受性に裏打ちされた表現力によるところが大きいと思います。

また、私はこの本によって、日本の植民地時代に白丁が不完全に解放され、そのことによって、生業を奪われ、戸籍による新たな差別を生じ、教育現場や教会での差別が根強く残ったこと、そして、未だに結婚差別として目に見えない差別を残していることを知りました。
日帝が本国と同じ事を植民地である朝鮮半島でも行ったことを知って総毛立つ思いでした。
以前紹介した「朝鮮紀行」の中でイザベラ・バードは「朝鮮の政府は腐敗しきっている。これを救うには、ロシアか日本に統治されるしかない。」と述べています。
日本統治によって、確かに朝鮮半島は民主化されましたが、罪も大きかったのだと思います。
「歴史に『もし』はない。」と言いますが、「もし、日露戦争でロシアが勝ち、朝鮮半島をロシアが統治していたとしたら、白丁はどうなっていただろう。」と詮無いことを考えました。

このように、この本は、白丁のことだけでなく、日帝時代の残滓や韓国人の気質などもよく分かる本でした。
みなさんも、機会があればお読み下さい。
by lee_milky | 2008-09-20 05:36 | Book Review | Comments(8)
Commented at 2008-09-20 09:50 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by lee_milky at 2008-09-20 10:07
☆at 2008-09-20 09:50さん、おはようございます。
深く考えても見ませんでしたが、確か2年程前に熊本で行われた全国大会に参加した時、ダリッドの報告をされた方が、前者の方だったと思います。
前者は、世界各国でマイノリティーの支援をしておられるそうです。
そして、その時、主催者側としてご挨拶されたのが、後者の熊本県の婦人部長さんでした。
だから、少なくとも、違う団体でも相反する立場ではないでしょうね。
日本にも、こんな読み物があればと強く思いました。

そうですよ。
あの時、非公開さんは、「根本さん」予想だったでしょ?
私は、大はずれで。
私も、この本を読んで、まさにそう思いました。
こちらこそ、こんな難儀なところにコメントありがとうございました。
Commented by LeeKeiX at 2008-09-22 06:05 x
アニョハセヨ
milkyさんのレビューに惹かれて、「神の杖」を購入してしまいました。中古ですけど(^_^;)
もうすぐ届くのが楽しみです。
Commented at 2008-09-22 20:20 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by lee_milky at 2008-09-23 03:32
☆LeeKeiXさん、おはようございます。
とても読みやすい本なので、ほんとうにお薦めです。
なにせ、根本さんの翻訳だもの。
通訳の内容も分かりやすくて、上品ですよね。
ビョンホンシも得してると思います((((爆))))
Commented by lee_milky at 2008-09-23 03:43
☆at 2008-09-22 20:20 さん、おはようございます。
私も、最近図書館派になりました。
明日はやはり根本さんの翻訳なさった「風の丘を越えて」を探してみようかと思います。

そうですか?
チャングムにも出てくるのですね。
どの国にも賤民思想があるのは、人間の性というか差別意識を持つのは人間の本能のようなものなのだろうと思うんですね。
だから、そこに棹さして自らの差別心を無くしていくためには、自分自身の努力や教育が必要なのだと私は考えています。
でも、これほどまでに優れた教材(?)はこれまで出会ったことがありませんでした。
日本にもこういうものがあるかしら?

>彼の長~~~~いインタビュー
あはは。
確かに。
根本さんが上手くまとめて下さってる?(笑い)
Commented at 2008-09-26 22:14 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by lee_milky at 2008-09-27 08:06
☆at 2008-09-26 22:14 さん、おはようございます。
あらら。
実は、この本「ひとの子」と書き方が似てるんですよ。
二重説話法。。。それより複雑かも?
でも、その一つ一つは「ひとの子」より興味深い内容ですけど。
宗教の話しは分かりづらいですものね。
「神の杖」の中に出てくる儀式的作法は日本人には理解しやすいかもしれません。

釜山は、残念でしたね。
チケットって、なかなか取れないのね^^;
ところで、私は土日の予定がぽかっと空いて、夫からもお許しが出て、行ける感じになってきました。
でも、祭りの後だし、娘は行けないから一人だしで、未だ迷ってます。
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