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日韓ナショナリズムの解体「複数のアイデンティティを生きる思想」

「日韓ナショナリズムの解体『複数のアイデンティティを生きる思想』(李健志著 筑摩書房発行)」を読みました。
李健志さんは、東京生まれで本籍は韓国済州島の在日コリアン。
専攻は、比較文学比較文化・朝鮮文学朝鮮文化で、現在県立広島大学人間文化学部準教授。

これも、韓国語の詩を探している時に図書館で偶然見つけた本です。
それにしても、韓国語の原書本って無いですね。
もっと大きいところなら、あるかしら?
次回、渡韓した時に買って来るっきゃない?。。。て、いったいいつ行けるんだろう^^;

う~~~ん、この本は、私の苦手とするノンフィクションということもあり、引用文が多くてその出典がそれぞれ異なるので、その度に文体が違って、こちらの思考回路もその度に一時停止してしまうので、なかなか本の中身に入っていけませんでした。
ただ、読みながら、ハッとさせられることや知らなかったことも多くて、付箋を貼りながら読みましたので、今日は、その付箋部分を紹介したいと思います。
それこそ、引用ですが^^;



<p.33~43序章-③「『抵抗のナショナリズム』とはなにか」より>
「日本のマジョリティのなかには、日本の体制が推し進める国家主義的な諸政策、すなわち日本の均質化に対して反対するとき、在日朝鮮人などのマイノリティの立場に立ち、『先の戦争による被害者である朝鮮人への罪滅ぼし』とでもいわんばかりにアジア各国に対し日本はとんでもないことをしたという『日本人としての自己否定』をする向きがある。これはいっけんすると『良心的』な考え方に思えるし、もちろん反省するのは悪いことではないが、そこに含まれているあの『自己否定』は、『謝罪したことで自分は日本の支配的な社会から距離をとる、あるいは超越する』ことが許されるという機能を秘めていないだろうか。(中略)彼らは『自己否定』を通して自ら超越的な立場に立つという『免罪符』を受けている、あるいは受けようとしてているからだ。それよりもむしろ、自分の中にある『加害者性』と『被害者性』をともに引き受け、他者との了解の不可能性を認識しながら、それでもなお語り、そして、当然ながらその語りに耳を傾ける他者が存在するならば、自己と他者が衝突し、何らかの共通の尺度、つまり社会性が生まれる可能性が存在する。」

<p.44~54「序章-④本論にはいるために-恣意的に切り取られるマイノリティー」より>
「マスコミがえらぶターゲット(=マイノリティ ※注釈はmilky)は『17歳』だったり、『新興宗教』だったり、『ニート』だったり、『元不良』だったり、『元イジメられっこ』だったり、韓国では『親日派の子孫』だったりと、それこそ枚挙にいとまがないほどで、なにかのきっかけになりつつ、それでもやはり恣意的に、降ってわいたように社会の構成員の一部を切り取り、名称を付ける=他称する。そして『普通のひとたち』は『彼らではないわたしたち』という位置に安住する。逆にいうと、自らが『善良で普通の日本人』であることを確保するために、特定の集合を切り取っているわけである。」とう部分があります。

「その他にも、筆者が交通事故などにあい車いすの生活になったとしたら、『障害を持つとされるひと』になってしまうし、ある日突然難病にかかってしまうことだってある。だから、マイノリティの問題とは、特別な誰かの話ではなく、この本を読んでいるあなた自身の問題であるということに気づいてもらいたい。既に述べたことだが、重要だから繰り返そう。みんながなにかの意味でマイノリティ性をかかえている。そして、ある日突然マイノリティとして切り取られることもある。その切り取ってくる側は、マジョリティの中に潜む『無意識で善意のナショナリズム』であり、マジョリティとはマイノリティを切り取ることによってしか存立しない

<p.68~78「第一章-②『内地』という無意識」より>
「マジョリティはマイノリティのことに気を使わずとも生きていけるが、マイノリティはマジョリティを無視しては生きていけない。」

<p.79~90「第一章-③北海道の立たされた位置、在日の立たされた位置」より>
「そう、かわいそうな在日朝鮮人のために、日本人の良心を代表して、彼が支援したのだろう。それは『善意』であれ、在日朝鮮人を日本社会から切り取ることにかけては体制に劣るものではなく、排除に荷担してるのである。」

<p.109~123「第二章-②韓国のナショナリズムと民主主義」より>
「盧武鉉政権を支えた支持層は『三八六世代』に代表されるといわれることがある。これは、八〇年代に大学に入学した、六〇年代生まれの、当時三〇代の人たちを総称したことばで、1987年の全斗煥政権と対立し、『民主化宣言』を勝ち取った世代を指している。(中略)もちろん、民主化を求める動きは当然のことだろうし、それを勝ち取ってきた韓国の市民運動には敬意を表すが、しかし、まずここで『三八六世代』といういい方に『大学入学』という条件が入っていることから、筆者は違和感どころか憤りも覚える。」

「そして、この世代(20代 ※注釈はmilky)は日本を普通の外国の一つとしてみる視線を内包しており、ジャニーズ事務所のタレントやオタクなどの現代日本文化にひかれているというのだ。これは、1980年代まで常識だった、『日本は憎いが、日本に勝つために日本語を学ぶ』という感覚とはかけ離れている。そして、金智龍氏は、韓国が変わるとすればこの世代が社会の中心に来たときだろうと述べている。」

<p.158~174「第3章-①「在韓華僑とは誰か」より>
「しかしこのコースも、後に見るように韓国での東洋医学の名称が『韓方』に改称されたことで、在韓華僑にとってさらに不遇な時期が訪れる。」

<p.219~226「終章-②まとめ-あなたも『複数のアイデンティティを持つもの』である」より>
朝鮮と台湾に『創始改名』と『改姓名』が施行されたのは、1940年のことである。その年は昭和15年、『皇紀2600年』の記念の年であり、『幻の東京オリンピック』も企画されていた。このときにあわせて、朝鮮と台湾の『九州・四国化』の第一歩として日本風の名前を要求したのではないか。そしてそれが小笠原の状況と無縁ではないのではないか(東京都小笠原の、明治15年までに出身国での名前を生かしたカタカナの名前で日本に帰化した西欧系島民に対し、昭和15年から17年頃日本風の名前にするように指導・教育がされたこと ※注釈はmilky)と思ったからである(但し台湾では許可制であり、朝鮮と同じ状況ではない)。

九州鹿児島県の美山地区に江戸時代からいる陶工の家系でも、それまでずっと韓国風の名前を通していたにもかかわらず、大戦中に日本風に名前が改められたという話を聞く。」
by lee_milky | 2008-09-23 06:50 | Book Review | Comments(16)
Commented by ナーナ at 2008-09-23 11:21 x
こんにちは。
日本で充実している店は、高麗書林、レインボー通商と師匠からお聞きしました。
おととい水道橋に行ったのですが、高麗書林は日曜定休で残念ながら行けませんでした・・・・
(師匠によると、高麗書林、本は充実しているけど、高いとのことでした!)
両方の店とも通販やってます!
Commented by ナーナ at 2008-09-23 11:25 x
【つづき】
高麗書林
http://www.komabook.co.jp/
レインボー通商
http://www.rainbow-trading.co.jp/

Commented at 2008-09-23 13:11 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by lee_milky at 2008-09-23 20:21
☆ナーナさん、いつもありがとうございます。
今、行ってきました。
やっぱり都会は良いなぁ^^;

通販は、目的がはっきりしてるときに便利ですよね。
横のプルダウンメニューに入れさせて下さいね。
Commented by lee_milky at 2008-09-23 20:31
☆at 2008-09-23 13:11さん、はじめまして。
そうですね。
この本の著者も同じ様な考えだと思います。

一人の人間としてのアプローチ。
ビョンホンシが実践してますよね。
Commented at 2008-09-23 21:11 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by lee_milky at 2008-09-23 21:29
☆at 2008-09-23 21:11さん、こんばんは。
私が、この本を読んで最も痛かった部分は、まさにそこでした。
痛いと言うより、そこが冒頭に来るから、初めは受け入れられなかったです。
でも、次第に自分の差別性を客観的に見ることができました。
そういう意味ではこの本はよい本だったのでしょう。
偏見の改革には情と理論の両面からのアプローチが必要ですよね。
そういう意味でも「神の杖」のあとのこの本は良かったのかも。

あの事件については、新聞と娘からの又聞きでしか情報がないので、ご指摘のシーンは観てないのですよ。
ここで教えて頂いただけでも、ちょっとぞっとしましたが。
私の周りにも、希望で異動する方が多いですが、動機が???の場合が多いですよね。
そんな内のお一人かもしれないですね。
Commented at 2008-09-24 09:15 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by lee_milky at 2008-09-24 22:13
☆at 2008-09-24 09:15 さん、こんばんは。
追記、ありがとうございました。
>善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや
なぜ、善人なおもてなの?って、意味がよく分からなくて、辞書で引いてみました。
悪人尚もて。。。と、間違えられることが多いことも書いてありましたよ。
その意味を読むうちに、以前、やはりコメ欄でこのお話がでたことを思い出しました。
以前のブログで甘人を語ってるときかな?
でも、すっかり忘れていました。
ありがとうございました。
良い復習になりました。


Commented by ナーナ at 2008-09-25 16:19 x
こんにちは。
今日、あるところに行ったら、『エリクソンは語る-アイデンティティの心理学-』という本が偶然目に入りました。
アイデンティティということば、最近は芸能人でも気軽に使っているのですごい腹がたつのです!(意味もわからないくせに・・・と!)
李健志さんという方は、学者でしょうから、軽い気持ちで使っているのではないでしょうけれども・・・

大昔、小此木啓吾が、エリクソンの自我同一性の本を翻訳していましたが、とても読みにくかったです。
モラトリアム人間の時代での紹介がわかりやすかったと思います。

以上ボヤキでした。
Commented by lee_milky at 2008-09-25 21:07
☆ナーナさん、相変わらずの辛口で^^
そうね。
最近、よく耳にしますね。
私は、何にも考えず、感じずですが、ナーナさんのように気にかかること、考えることが大切なのでしょうね。

モラトリアム。。。って単語を久々に目にしました。
モラトリアム世代も、もう立派な小父さん小母さんですよね^^;
Commented by 李建志 at 2008-10-21 07:02 x
はじめまして。
わたしの書いた本を読んでいただき、ありがとうございます。あの本は、わたしにとっても難産のすえに出せたという経緯があり、すごく思い入れのあるものです。その分、いろいろ「熱く」なっていて、誤解を受けるところもあるかも知れません。
わたしがこのような考えに至ったのも、在日朝鮮人が自らの立場を「被害者」という固定的な立場から、一方的にマジョリティを攻撃するのを当然視していることへの違和感からです。こういう問題に触れたことのないマジョリティならば、マイノリティからの「告発」は、「正義らしさ」をまとっているだけに、きっと辛いだろうなと思ったのです。だとすれば、たくさんの人に問題を共有してもらうためにも、自らの醜い部分に眼を向けなければならないのではないかと思ったわけです。いわば、そこまで追いつめられてのぎりぎりの思想なのでしょう。
ともかくも、コメントしてくださったことは感謝にたえません。ありがとうございます。これからの参考にさせていただきます。
Commented by lee_milky at 2008-10-22 00:09
☆李健志さん、はじめまして。
まさか、私の読んだ本の著者さんが、ここを訪れてくださるなんて、思っても見なかったので、大変恐縮しています。

今、読み直してみたら、のっけから、辛口ですみませんm(_ _)m
常日頃、「日本人としての自己否定」をして、免罪符を受けている私は、「次は何を突きつけられるか。」と、ドキドキしながら読ませて頂きました。

本の著者として、おっしゃりたいことは沢山おありになるでしょうが、「勘違いも立派な読み方の一つ」だそうですので、どうぞお許し下さい。
もともと、私がブログを立ち上げたきっかけは、同じビョンホンファンの中に朝鮮半島が南北に分断されていることすらご存じない方がいらっしゃることを知って少なからずショックを受けたからです。
それこそが免罪符を受けていることに他ならないのかもしれませんが、日韓問題や在日コリアンの問題について考え、それをお仲間さんに少しずつでも広めていきたいと思っています。
Commented by lee_milky at 2008-10-22 00:09
☆つづきです。

それにしても、「そこまで追いつめられてのぎりぎりの思想」とは、壮絶ですね。
私は、中学校の教員をもう20年以上もしていますので、数人の教え子の顔が思い浮かび、ドキリとしました。
いずれも、韓国籍だった彼らは、今頃どんな人生を送っているでしょうか。
Commented by 李建志 at 2008-10-22 06:43 x
おはようございます。
べつに、勘違いなさってるとは思ってません。それに、管理人さんが「免罪符」を得ようとしているとか、そんな批判をするつもりはありません。これは自己批判の本で、激しい民族主義者だった頃の自分(20代)への批判なのです。
たくさんの学生を教えてこられたのですね。わたしも何人かの学生が「実は自分も在日で…」と告白しに来たのをおぼえています。日系南米移民の二世、三世の差別問題などを考えても、早くこういう時代を終わらせたい。そのためには、いままでこういう問題を考えてこなかった、「また在日がなんかいってるよ」といわれそうな「普通の日本人」に、二項対立的議論とは違う位相で訴えたかったのです。
教育カイカクのおかげで、現場は紙が増え、会議が増え、子どもと向き合う時間さえなくなって、仕事をこなすのが精一杯になりつつあります。だからこそ、ぼくは授業を「ご機嫌」でやることにしてます。良くも悪くも、教室内での教師は「権力者」なのだから、ぼくが不機嫌だと学生に悪影響を及ぼすと思うので。
長くなりました。今日も一日、笑顔でがんばります。先生もいっしょに笑って授業しましょう。
Commented by lee_milky at 2008-10-22 19:00
☆李建志さん、こんばんは。
私の場合、生徒は中学生だから、自分自身が在日だと知らない子も多いんです。
その子が16才になったら、現実といきなり向き合わせることになる。。。それが心配になったときもありました。
兄弟の中で、私のクラスの子だけが在日というケースもありました。
お父さんもお母さんも同じ兄弟なのにです。
日本の戸籍制度について考えさせられました。
学級文庫に彼とその友達に是非読んで欲しい本を置いたのもこの時期です。
韓流ブームのずっと以前ですから、探すのも一苦労でした。
今は、たくさんの本が出版されるようになりました。

授業をご機嫌でやる。。。私も同感です^^
教師は権力者。。。そうかもしれません。
今日は、3年生の男子に「モンスターティーチャー」と言われました^^;
フレンドリーな感じで言われたのですけどね。
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